遂にこの日がやってきました!
2021年7月1日の予約開始から約3ヶ月、待ち続けたカメラが手元に届いたのです。
Nikon Z fc NIKKOR Z 28mm F2.8 Special Edition キット
Nikonの伝統的な一眼レフカメラのデザインを踏襲したミラーレスカメラです。
Nikon Zマウントを採用していますがセンサーサイズはZ50同様にAPS-CサイズのNikon DXフォーマットのカメラです。
レンズキットは標準ズーム16-50mm とボディ同様にマニュアルフォーカスレンズの外観を彷彿とさせる28mm F2.8 Special Edition がありますがelmarは28mm f2.8キットを選択しました。
NIKKOR Z 28mm F2.8 SEはNikon FXフォーマット(フルサイズ)対応レンズでNikon DXフォーマット(APS-Cサイズ)のZ fcで使用すると画角53°、換算約42mmの標準レンズとして使用できます。
これは日常のスナップに最適でスマートフォンで標準的な26-28mmに慣れていると世界を「切り取る」感覚で使える気がします。
自社製品の遺産を蘇らせるヘリテージデザインはデジタルカメラならOLYMPUSのPEN-Fなどが好例でした。
このヘリテージデザインというものは昨今の工業製品では多くなっていてオートバイならHONDA GB350やKAWASAKI MEGURO K3、BMW R nineTなど現代の技術で名車を蘇らせる流れあります。
自動車でもTOYOTA スープラの復活、北米HONDAのインテグラ復活宣言など枚挙にいとまがありません
Nikon Z fcはその外観からNikon FM2をモデルにしています。
FM2は1980年代のフィルム一眼レフで内蔵露出計を動作させるには電池が必要ですがシャッターや絞り、ピントは全て機械式で電池を抜いてもフィルムを装填すればいつでも撮影が可能でした。
この事から電池を入れずに露出を自分で決める練習機として又は緊急時のサブ機として大活躍したものです。
このカメラの外観を現在に蘇らせたのがNikon Z fcというわけです。
手持ちのNikon FEと比較してみました。
FE、FE2は機械式シャッターでマニュアル露出専用のFMシリーズに対して電子シャッターで絞り優先オートを搭載した機種です
ご覧のように非常によく似ています。
ZマウントはFマウントより大口径なためレンズ自体は大きめに見えます。
横から見るとこんな感じ。
特筆すべきはボディーの薄さでしょうか。
Z fcはバリアングル液晶搭載でありながら分厚くならずフィルムカメラ同様のサイズに抑えています。
これは背面に圧板を入れて蓋ができればいいフィルムカメラと違い、イメージセンサーや液晶パネルを組み込む必要のあるデジタルカメラでは非常に困難な設計だったろうと推察できます。
デジタル一眼レフのNikon Dfはこの辺りが難しかったらしく前面の端正なデザインに比してゴロッとした印象がありました。
がっ!!!
このZ fcはミラーレス機のメリットを活かしてフィルムカメラと遜色ないボディサイズを実現しています。
まさにたてよ!国民!ジークXXX!といった演説を打ちたくもなりますがカメラオタク以外には響かない戯言であるので退屈なら読み飛ばしましょう。
そんなわけでFE/FMシリーズの兄貴分にあたるNikon F2にも登場願いました。
elmarは前述のように予約開始と同時にオーダーしていたのですが折からのコロナ禍により発売が延期されようやく10月半ばに手元にやってきたわけです。
遅くなった理由としてはNikon Directで依頼するとボディーの貼り革を張り替えできるプレミアムエクステリアキャンペーンを申し込んでいたからです。
カラーは「ナチュラルグレイ」を選択。
標準のシルバーに黒革もいいのですこの色なら他人と被りにくく派手になりすぎないように思いました。
使い込んだ時にどんな風合いになるか楽しみです。
それではカメラの細部を見ていきましょう。
今回はフィルムカメラと相対するボタンやダイヤルを中心に紹介していきます。
- シャッターダイヤル
最高速1/4000秒が刻まれており、操作感もFM2を彷彿とさせる軽すぎないもの。
より細かなシャッター速度を設定したい場合は1/3STEPを選択しEVFあるは背面液晶で行います。
- 露出補正ダイヤル
フィルムカメラのFM/FEシリーズでは巻き上げレバーの軸に当たる位置に設置。
自然と親指がかかる位置でファインダーを覗きながら設定が可能。
- F値確認液晶パネル
小さなところですがコレ、重要です。
Zマウントレンズには絞り値の表示がなく今までのZシリーズカメラでは上面の液晶パネル、EVFまたは背面液晶で確認します。
Z fcは操作系がダイヤル式のフィルムカメラを模していますからここに大きな液晶があると興醒めです。
フィルム一眼レフにはレンズの絞り値をファインダー内で直読できる小窓がありましたがそんなイメージで使えます。
- ISO感度設定ダイヤル
フィルムカメラなら巻き戻しレバーがある左側に設置されています。
中央のロックボタンを押してダイヤルを回します。
ISO100-51200が選択可能でH1で102400、H2で204800という増感撮影も設定可能。
増感設定はかなりノイズが増えます。
- 撮影モード切り替えレバー
ISO感度設定ダイヤル基部にあります。
P(プログラム)、A(絞り優先オート)、S(シャッター優先オート)、M(マニュアル)そしてAUTO(オート)という形式です。
ISO感度を変更する際にレバーを回してしまう事がありました。
ボディ前面
- Fnボタン
一眼レフならプレビューボタンがある位置にあります。
デフォルトではホワイトバランスの変更に設定されていますがユーザーの好みに合わせて機能を割り当てる事ができます。
- ファインダー
アイカップが丸型になっていますが実際のファインダーは角形です。
背面のボタン類はミラーレス一眼としては一般的なものなので割愛します。
- ボディー底面
三脚取付部はリブがつけられ補強されていますが材質はおそらく樹脂製。
ボディー上部のマグネシウム合金の質感とは異なってややチープに感じられます。
外観の紹介はこれくらいにして実際に撮影していきましょう。
今回は全てJPEG撮って出し、やむを得ないトリミングのみで掲載します。
屋内での撮影でISO5000という高感度ですがノイズも少なく自然な描写です。
Z fcには『瞳AF/動物AF』が搭載されており人物あるいは動物(犬、猫)の顔や瞳を認識してAFが追従します。
標準設定されているシャッター音は軽めの音で耳障りにならず個人的には好みですがこのようなシーンでは無音シャッターも選択可能です。
秋晴れが広がる水元公園にて。
画面手前の影と日向の明暗差が大きいシーンですが自然な描写です。
絞り開放で撮影。
このレンズの最短撮影距離は撮像面から19cmでかなりのクローズアップが狙えます。
さすがにトンボの複眼に動物AFは反応してくれませんでしたがスポットAFを使用することでぎりぎりまで近寄って撮影できました。
スナップショットで多用するF5.6からF8の中間絞りの描写は、このレンズの場合、特に重視したいポイント。
解像度と背景のボケ方が程よくバランスしており使いやすい印象です。
NIKKOR Z 28mm F2.8 SEは28mmレンズですからF2.8とはいえ大きくボケるわけではありませんがDXフォーマットの場合、標準レンズの画角に相当しますから絞りによるボケの変化も観察しておきましょう。
絞り:F2.8
絞り:F4
絞り:F5.6
絞り:F8
絞り:F11
絞り開放はややフワッとした描写ですが一段(F4)絞ることでシャープになります。
総じて描写は自然でどの絞りでも破綻のないレンズと言えるでしょう。
カメムシを発見したので近寄って撮影してみました。
日の当たった樹木の表面がカササカせず適度な存在感を持っています。
解像度重視のレンズだと潤いのない描写になりがちですが穏やかな傾向ではないでしょうか。
水面に反射する太陽を背景に入れて玉ボケのチェック。
NIKKOR Z 28mm F2.8 SEは絞り羽根を7枚使用した円形絞りとなっていますから点光源でも絞りの形状が出にくく美しい玉ボケになります。
逆光時の撮影はいつの時代もレンズやカメラの性能を見る上で重要です。
太陽を直接、画面に取り込みつつススキの透過光を描写するのはなかなか難しいと考えられますが特に細かな設定もせず、狙った絵が書き出されてきます。
Z fcが単なる外観だけのカメラではないことの証左でしょう。
高感度での撮影
Nikon Z fcは有効画素が約2088万画素のCMOSセンサーでISO感度100-51200まで対応しています。
ボディー内手ぶれ補正は搭載されていませんので暗いところでの撮影はISO感度を上げて撮影する事が多くなります。
いくつか作例をご覧ください。
動物AF使用。
明るく見えますが猫の瞳孔が開いているところから分かるように日没後の撮影です。
渋谷の裏通りの営業も徐々に復活してきています。
このカットはあまり感度を上げずに撮影しています。
フィルムカメラならISO400のフィルムを4倍増感している感覚で撮ってみました。
1990年代にはISO1600やISO3200のフィルムは販売されていましたが少し、高価で自家現像するならISO400のTriXを増感して使うのがコスト面でも有利でした。
Z fcを携えて街を歩くとそんな時代を思い出します。
ピクチャーコントロール「ブリーチ」適用。
渋い色合いになり重厚な雰囲気を醸し出すフィルターです。
ハロウィン前夜の渋谷センター街通り。
コロナ禍以前とは比べられないですが人出も戻ってきています。
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高感度撮影はISO6400は十分に常用可能に感じます。
多少のノイズが乗ってきますがISO102800でもかなりイケます。
うーん、Nikonの技術、恐るべし。
モノクローム
今回、テスト撮影にあたって最も楽しみだったモノクロームです。
ここ数年はNikonのデジカメを使用していなかったのでZマウントレンズの実力を体験したかったのです。
ISO12800の高感度で少しノイズっぽいのですが路面の反射やシルエットなどモノクロームならではの雰囲気が出ています。
雨でぎらつく路面を切り取ってみました。
DXフォーマットでの28mmレンズはこのようなスナップショットでの撮影に適しています。
夕暮れの東京ゲートブリッジをモノクロームで。
ISO51200ですがモノクロームだと完全に常用感度と言えるかもしれません。
明暗差のあるシーンですがISO12800設定にも関わらず暗部の描写が素晴らしい。
地下街へ降りる階段のアクリル窓部分ですが無数の傷が人々の往来を物語っています。
絞りを開けて近寄る事で印象的なカットになりました。
Z fcとNIKKOR Z 28mm F2.8 SEの組み合わせはズームで画角を変化させずに自分が動いて撮影する、まさに写真の基本に立ちかえる事のできるレンズキットかもしれません。
フィルムカメラで写真を始めた頃に撮影していた感覚を取り戻せるかもしれません。
ピクチャーコントロール
Z fcには撮影時に選択できるフィルターが各種用意されています。
同一の場所から切り替えつつ撮影しましたので参考にしてください。
instagramに代表されるSNSへの投稿も考えられているのでしょう。
どのフィルターも個性的でシーンに合わせて使って見るといいでしょう。
またフィルター効果はエフェクトの強弱を調整可能なのでちょっとだけ効かせる技も使えます。
Nikon Zfcはカメラらしいデザインと最新のデジタル技術を融合させたNikonらしいカメラです。
もし、フルサイズセンサー搭載モデルが追加されるならNikon F3ベースのデザインを採用してほしいと願うelmarがお送りしました。
〜次回予告〜
ZfcはNikon逆襲の鏑矢となるか
カメラ世界には明日と遺産が共存している
マウントアダプターは現在と過去をつなぐ架け橋なのか
2週間後もelmarと「沼」に付き合ってもらう