記録的な猛暑もいつの間にか過ぎ去りめっきり寒くなってきた近頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
ちょっと前に引いた風邪が長引いてしまいヘロヘロ状態のelmarです。さて、今回はと言うか今回も写真ネタです。
感光体が湿板から乾板、そしてフィルムからデジタルへと変わっても写真の基礎は写真術誕生後なんら変わっていません。
それは距離と露出を合わせ、構図を決め露光を行う事です。現代のデジタルカメラは撮影すれば即座に画像が確認でき、ネットを通じて全世界へ配信できます。
確かに便利になりました。最新のカメラを使えば何でも可能なように思えてしまいます。
ですが考えてみて下さい。写真、映像は撮影する「現場」でなければ記録できません。CGで作ってしまう事も可能かもしれませんが、それは「写真」ではなく「のようなもの」ではないでしょうか。
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先頃、ミャンマーで悲しい出来事がありました。邦人ジャーナリストが取材中に射殺された事件です。どんなにインターネットやデジタル化が進もうとも「現 場」はあくまで「現場」であり「人間」はあくまでも「人間」である事を思い知らされました。謹んでご冥福をお祈り致します。
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さて、巷では最新ついにニコンが35mmフルサイズ機を発売するなど話題が盛りだくさんですが、結局「写真」という現象は「構図」と「露出」で成り立っています。
最新のデジタル一眼であろうが、100年前の乾板式のカメラであろうが原理に変わりはありません。もちろん、「被写体」がまず有る事が最大の優先事項であることは言うまでもありません。この「被写体」を表現するために「写真」があるのだと私は考えます。
「構図」に関しては、撮影者が判断すべきものでどれが正解ということはないのですが、写真を始められた方には撮りたいものをはみ出るくらい大きく撮る気構えで撮影してみて下さい。まずは被写体との距離感をなくす事が重要だと思います。
「露出」はレンズ内の「絞り」とカメラボディ内の「シャッター」の組み合わせによりフィルム、CCD(CMOS)などを感光させ画像を得ることです。
感光体の感度は通常ISO感度で表しISO100,200,800・・・と数字が大きくなるほど高感度、つまりより少ない光でも撮影が出来る事になります。
「絞り」と「シャッター」の関係は水道の蛇口から水を出して洗面器に水を張る事に似ています。
この場合、洗面器の大きさが「感度」に相当します。
「絞り」つまり蛇口を開けると水は勢いよく出て、すぐに洗面器が満タンになりますから蛇口を閉めます。
この蛇口を開いている時間が「シャッター速度」です。
逆に蛇口をちょっとだけ開けると洗面器を満たすのに長い時間が必要になります。
この組み合わせが「適正露出」です。
単純に失敗のない写真を撮るだけであれば皆さんのお使いのカメラの「P」(プログラム)モードや「□」(フルオート)モードで簡単に撮影はできます。しか し、ひとしきりカメラに慣れてきたら是非「AV」(絞り優先)モードや「TV」(シャッター優先)モードを使って積極的に設定を変えて撮影してみて下さ い。
初めのうちは難しいかもしれませんが上記の基礎をマスターしてしまえば何ら怖いものはありません。
何しろフィルム時代と違い、失敗したら「消去」でき現像代もかかりません。どんどん失敗しましょう!
偉そうな事を書いていますが私もまだまだ修行中の身ですので先輩方にはご指導いただければ幸いですm(>_<)m。
それでは、僭越ながら「撮影テクニックについて私が知っている2、3の事柄」をご案内させていただきます。
1.時間を味方にしよう!
写真にとって露出の瞬間は通常100分の1秒程度のごく短い時間です。ここでは組み合わせによって写真の印象がどのように異なるかご案内します。
奥多摩の日原鍾乳洞に行った時に撮影しました。
共通データ:使用カメラ:PENTAX *ist DL2 レンズ:PENTAX FA 50mmF1.4 ISO感度:200
日原鍾乳洞の脇には多摩川の支流の日原川が流れていて、以下の作例ではこの川をモチーフにしました。
作例A
絞りF1.8 シャッター速度1/800秒
このシャッター速度では水の流れが水滴に見え、面白みのない写真になってしまいます。
作例B
絞りF5.6 シャッター速度1/60秒
このシャッター速度になると水の流れが感じられるようになってきます。
作例C
絞りF22 シャッター速度1/5秒
ここまでシャッター速度を遅くすると「水」は「川」に変貌します。時間をうまく使って印象を表現する事が可能です。
本来はさらに長い露光時間にして川の流れを線だけにして手前の岩を浮き立たせるのが常套手段ですが、この日は恥ずかしながら三脚を忘れてしまいましてこれが限界でした。(汗)
このようにシャッター速度は高速シャッターを使って瞬間を切り取る以外にも低速度を使って「時間」や「躍動感」を表現する事ができます。
例えばレーシングカーを撮影する場合、走行しているクルマと相対速度をあわせてカメラを振り、低速シャッター(1/2から1/60秒)を使用すると背景が流れ、ホイールも回転しているように撮影できますがかなりの練習を必要とします。
逆にテニスなど人物が行うスポーツなどでは極力、高速シャッター(1/500から1/4000秒)を使用して動きを止めるように撮影する傾向があります。もちろん、どちらのシーンも逆の設定が有り得ますので撮影意図によっていろいろ試してみるのも面白いです。
2.絞りをコントロールしよう!
絞りの機能は光量の調節だけではありません。写真表現のなかでも非常に重要な役割を担っています。
それは「被写界深度」のコントロールです。
絞りを絞り込んでいくと当然ながら光量は減少しますが、撮影画像に変化が起きます。ピントを合わせた位置の前後に「ピントが合ったように見える範囲」がありますが、絞り込むとこれがさらに深くなっていき、逆に絞りを開けて行くと浅くなっていきます。
この「ピントが合ったようにみえる範囲」を「被写界深度」と呼びます。
この深度をコントロールできれば表現の幅がさらに広がります。注意する事は広角、標準系のレンズでは元々の深度が深いため顕著に効果を得られますが望遠レンズでは元々の深度が浅いため絞り込んでもあまり効果が得られません。
また絞り込むと光量が少なくなりますから当然シャッター速度が遅くなり、手ぶれ、被写体ぶれの影響が大きくなります。
最新の手ぶれ補正機能付きのカメラ、レンズを使用しても解決する訳では有りませんので、ファインダー内に表示される撮影データを確認しながら撮影しましょう。
共通データ:使用カメラ:Canon EOS 30D レンズ:Canon EF20-35mm F3.5-4.5(焦点距離35mmで使用)感度:200
作例A
絞りF5.6 シャッター速度1/400秒
ピントは手前の白いコスモスに合わせています。背景の部分に注目して下さい。
作例B
絞りF8 シャッター速度1/200秒
上の写真と比べると全体にピントがあって来ているのが分かります。
作例C
絞りF16 シャッター速度1/40秒
さらにピントの合う範囲が深くなってきています。
このように被写界深度のコントロールは写真表現の上で非常に重要です。人物撮影などの場合は中望遠レンズを使用して人物の後ろに距離をおき、あまり絞らず に(F2.8-5.6)撮影すると人物が浮き立ちます。この時、背景のボケはうるさくなりすぎないよう線状のものや光るものは避けたほうが無難です。
風景写真などの場合は広角レンズを主に使用し、絞りをぐっと絞って(F8からF22)撮影すると、画面全体にピントが合ってきますので、より引き締まった写真になります。
ただし、これはあくまで一般論ですので、撮影条件や撮影意図によっては逆の設定を使用する場合もあり得ます。
3.感度自由自在!
作例A
撮影データ:使用カメラ:Canon EOS 30D レンズ:Canon EF20-35mm F3.5-4.5(焦点距離20mmで使用)感度:1600
絞りF4 シャッター速度1/5秒
午後9時頃撮影。感度をISO1600に設定し三脚などは使用せず電柱に体とカメラをそっと押し付けて撮影しました。
10/1から10/10までピンクリボンin東京2007の開催中、東京都庁がピンクにライトアップされていました。
作例B
撮影データ:使用カメラ:PENTAX *ist DL2 レンズ:PENTAX FA 50mm F1.4 感度:3200
絞りF2.8 シャッター速度1/8秒
夕日とかではなく午前2時頃の月です。この日は中秋の名月にあたり非常に明るかったため手持ちで撮影してみました。かなりノイズっぽくなりますがちょっと非日常の雰囲気が演出できましたでしょうか。
35mmフィルムに限った話ですがフィルム時代は撮影途中にフィルムチェンジは出来ませんでしたし、ISO感度を変更した場合は現像時にどちらかを指定せ ざるをえませんでした。緊急時はダークバック内でフィルムを取り出して切断、フィルムケースに入れて別々に現像するなんて荒技もありましたが・・・。
ブローニーフィルムのカメラではフィルムバック交換可能なものがありましたのでこれをうまく使えば、撮影途中でもカラーからモノクロへ、低感度フィルムか ら高感度フィルムに交換する事もできましたがあらかじめその分のフィルムバックを用意していなければなりませんから、スペース的にもコスト的にも大変でし た。
さて、デジタル一眼ではそんな制約が全くと言っていいほどありません。メモリーとバッテリーの許す範囲なら限りなく撮影できますし、感度も一枚ごとに変更できます。あとからモノクロにする事だって簡単ですし、ぶれたり、失敗した写真はその場で削除できます。
ですが、個人的にはこの便利さに甘えていけないと思います。失敗した写真はできれば消さずにあとで見直して「なぜ、失敗したのか」「どうしたら思い通りに 撮れるか」と検討する反省材料にしていただきたいですし、大げさかも知ませんがあなたの貴重な財産であり、歴史だと思います。
また、以前フィルムカメラを使用されていた方はまだお持ちでしたら時々は使ってあげていただきたいと思います。
おまけ
以前アップした「ねじ式」の際、撮影に行った芦ノ湖スカイラインで撮影したものです。Fujinonレンズで撮影しましたが画面の右側にシミのようなものが見えますでしょうか。
これ、実はCCDの汚れです。常日頃からメンテナンスが欠かせないなあと思いつつ、ダストリダクション機能は便利だなーと思った一枚です。
以上、elmarがお送りしました。