みなさま本年もよろしくお願いします。
カメラを趣味とすると交換レンズに刺激を求めたくなります。
欠かせないものですが、慣れてくるともっと刺激が欲しくなる事があります。
最近、大口径でありながらコンパクトでリーズナブルな価格の50mmレンズを入手しました。
七工匠 7artisans 50mm F1.1 ブラック ライカMマウント
ここ数年で一気に増えてきた中国製レンズの一つです。
フルサイズ対応の50mm標準レンズでF1.1の明るさを誇ります。
マウントはライカMマウントでマウントアダプターを使えば様々なカメラに使えます。
詳しくは後述しますが距離計連動するのも大きな特徴です。
一般的にライカM用レンズは高価で知られています。
例えば大口径標準レンズの50mm F1.4ならCanon、Nikonの一眼レフ用レンズで4〜6万円くらいですがライカ純正のズミルックス50mm F1.4は60万円付近です。
確かに光学的に優れたレンズである事は分かっているのですがなんとも高い。
それではと中古で探しても現行モデルはさほど値落ちせず、初代〜二代目あたりでも15万は下らないのです。
もっとも、この辺りの相場は20〜30年前でも同様でしたから相対的には安くなっているのかもしれません。
七工匠 7Artisan 50mm F1.1は4〜5万円で購入ができます。
外観はこのようにしっかりとした作りです。
Leica M9に装着するとこんな感じ。
距離リングのトルクは適度な粘りがありピント合わせも行いやすそうです。絞りリングにはクリックストップがなく小絞り(F値が大きくなる)にするほど間隔が狭まります。
古いレンズにはよくある形式なので私は違和感ありませんが一眼レフ用レンズの感覚だとちょっと戸惑うかもしれませんね。
絞り羽根は13枚と多く真円に近い形状でいわゆる「玉ボケ」が期待できます。
後ろから見るとレンズ後玉が結構、出っ張ってます。
一部のM型ライカやマウントアダプターを介しての装着には注意が必要です。
手持ちのLeica M9やMマウントアダプターを介してのCanon EOS RPへの装着には問題ありませんでした。
M型ライカは距離計連動式のレンジファインダーカメラです。
一眼レフとは違いレンズの繰り出し量によってファインダーの二重像を合致させピントを合わせます。
何だか小難しいことに感じるかもしれませんがファインダーと距離計窓による三角測量を機械式に連動させているだけです。
距離計連動式カメラの場合、画面中央の二重像を合致させてピントを合わせます。
この連動をさせる部分が重要でカメラボディ内にコロとレンズ側にカムがあります。
機械的、光学的に正確にできていないとファインダー上ではピントがあっていても実際のピントがズレる場合があります。
このレンズを購入するときに心配だったのがここの精度です。
しかし、中国メーカーのたくましいところで多少のズレがあってもユーザーが調整可能とする設計をしています。
正確に合わせるために工数が増えて歩留まりが悪くなり価格が上がってしまう事を避ける為なのか正確に一本一本合わせるのが手間だと判断したのかは不明です。
距離計を合わせる為のチャートとマニュアル、工具が同梱されてますので三脚があれば誰でも調整が可能です。
距離計調整の方法
1.チャートを水平に固定して2mの位置にカメラを固定します。
この時チャートを30度の角度で見下ろす位置にします。
私はiPhoneの「計測」アプリを使い、レンズの軸線を調整しました。
2.ファインダーでピントを合わせ撮影しPC上で確認。
<<画面中央部を切り出しています>>
ファインダーでピントを合わせたチャートの画像を拡大して実際のピントを確認します。
少し後ピン傾向でしょうか。
3.ピントがずれていれば距離計カムのネジ2箇所を緩めカムを調整。
専用工具が付属していますのでマニュアルの記載に従って調整します。
前ピンなら反時計周り、後ピンなら時計回りへ回転させ固定しますが0.5~1mmといった非常に細かい調整になるので注意が必要です。
4.再度撮影してズレがあれば適切な方向へ回転させる手順を繰り返します。
ほぼ、合焦しました。
実際にやってみると手順自体は難しくありません。
距離計カムのネジは徐々に緩めてから回転させましょう。
完全に緩めるとカムの調整がフリーになって調整に手間取ります。
※elmarは実際に大きく動かしてしまい軽くパニックを起こしました。
マニュアルにはないですが初期の状態でカムにマーキング等を行っておくとよいでしょう。
何度か調整して納得がいく設定になったので撮影を開始します。
ご覧のように開放ではハロやフレアが多くフワフワした描写です。
非点収差が原因と思われる「ぐるぐるボケ」が前ボケに出ています。
後ボケは比較的大人しい傾向なので使い方を工夫すれば気にならないように思います。
周辺光量はスゥーと落ちていてポートレートなどでは美点になる可能性を秘めています。
現代のレンズにありがちな開放からシャープで破綻が無い描写とは異なりオールドレンズの描写に近い印象です。
絞りを変化させて描写の変化を見てみましょう。
F1.1開放絞り最短距離0.7mで撮影
ほわほわですがピントがあったところは芯があります。
F2付近で撮影すると少し改善されます。
F4での撮影では深度も稼げてボケとのバランスも良い感じ。
F5.6このあたりが最も美味しいところですね。
F8に絞ると解像力がもっとも上がりカッチリとした描写になります。
F16の最小絞りで撮影すると被写界深度も深く周辺光量落ちも気にならなくなります。
世田谷美術館にある彫刻の台座部分を撮影して質感描写を見てみましょう。
わずかに色収差が見られますが質感もしっかりと描写さていて好印象。
無人のベンチを少し引いて撮影。
なぜか寂しい気分になる冬空の雰囲気を意識してみました。
少し絞って看板の背面にギラつく金属のヘアラインをキリッと浮き立たせてみると前ボケもあまり乱れずまとまりました。
このレンズは撮影距離や絞りの位置によってボケ方が変わりやすい印象です。
個体差もあるでしょうから全てが同様の傾向とは限りません。
茨城県の霞ケ浦に行ってきましたので作例をご覧ください。
逆光条件ではフレアやゴーストが出やすいですが割りとコントロールしやすい印象です。
霞ヶ浦大橋
F16で撮影。
絞り込んだ時のシャープさは非常に好ましい描写。
露出を切り詰め、絞り込めば印象を強める事も可能。
開放絞りでも背景との距離や明暗差を意識すれば美しいボケ味が待っています。
港の重機の枯れた風情を青空が浮き立たせます。
F5.6以降ならピントの合ったところはとてもシャープでボケとのバランスが良いです。
神田付近を散策しながらのスナップショット。
1931年竣工で登録有形文化財である丸石ビルディング(旧太洋商会ビルディング)の石像。
後ボケは少々うるさい感じもしますがナイスな描写です。
JR神田駅周辺の煉瓦造りの高架を照らす冬の光。
明暗さがある被写体だとコントラストが強く出てくるように見えます。
乾燥したレンガと漏水のコントラストがいい感じです。
F8くらいに絞ると解像力が上がりシャープな描写になります。
光をうまく活かせるレンズのような気がしてきますね。
大口径を活かしてイルミネーションも撮影してみました。
画面周辺の暴れっぷりが好みの別れるところですが、個人的には大好物です。
ISO 160設定ですがF1.1の明るさのおかげか1/250秒でシャッターが切れました。
開放絞りでは口径食の影響で周辺のボケの形が歪みます。
こういった大口径レンズではある程度、発生する現象なので絞れる場合は少しでも絞るようにしましょう。
アウトフォーカスになっていくところの柔らかさが新しいオールドレンズといった感じです。
背景でボケているイルミネーションは口径食の影響で形状が変わっていますが輝度の落ちる看板の照明は大人しい描写です。
この傾向を理解して使えばうまく撮れそうですね。
同じ条件で絞りをF2に設定して撮影。
今年は2020年。
オリンピックイヤーですね。
カメラの歴史もオリンピックと密接な関係があり、過去の幾つものエポックメイキングを起こしたカメラやレンズが活躍しました。
今年はCanonからEOS-1D X MarkIIIがすでに発表され、NikonからD6が発表されるようです。
両社とも一眼レフの限界へ挑むかのような魅力的なスペックですね。
ミラーレス一眼では一足先にSONY α9 IIが発売されておりまさに三つ巴の戦いになりそうです。
とても魅力的な機種が多いのですがどれも高価であり、おいそれと入れ替えできるものではないかもしれません。
じゃんぱらではお使いのカメラ、レンズの買取を行っています。
機材の入れ替えにはお役に立ちますのでご利用、お待ち申し上げています。
以上、elmarがお送りしました。