お気づきの方もいらっしゃると思いますがこのタイトルは偉大な写真家の
自伝のもじりです。(畏れ多い・・・)
2009061901
お久しぶりです、elmarです。
先日、コゲラ(キツツキの一種)を見かけました。
だんだん暑くなってきていますね。今年の夏は暑く、長くなるのでしょうか。
2009061902
あ、誰かこっち見てる!
2009061903
実物大っす!いまなら、お台場に立ってらっしゃいます。
さて、今回は「ボケ」についてのお話です。
「ボケ」てなんでしょう?漫才や植物ではなく、写真を撮影した時にピントがあった所の前後が文字通り「ボケて」写る事です。
人間の眼は非常にというか、おそろしく良く出来ていて、「ボケて」見える事はあまりありません。これは眼球内の網膜が球体である事、フィルム/撮像素子が平面である事も影響します。
いつかは見たまま写るカメラが開発されるかも知れませんが、記録には最適でも美しく表現するには物足りないかもしれませんね。
「ボケ」は写真独自の表現手法です。うまくボカせば作品の幅が広がりますのでぜひ、マスターしてください。
では行ってみましょう!

ボカすために!その1
レンズを選ぼう

2009061904
Canon EF 50mm F1.8 II
今回はEOS 5D(フルサイズ)を使用しますので50mmレンズを導入しました。このレンズは非常に安価ですが侮れない実力を持っているレンズです。
じゃんぱらでの在庫はコチラをご覧下さい
各種のデジタル一眼レフ用レンズには最大F値の表示があります。
このレンズには50mm F1:1.8と表記されています。
この1.8という数字が小さいほど「明るい」大口径レンズになっているわけです。
同じ焦点距離ならば数字が小さいレンズほど絞りを開放にして撮影すれば「ボケ」は大きくなります。
明るくする事は可能ですがやっかいな事に大口径にすればするほどレンズ収差(歪み)を除去する事は困難になっていきます。
レンズの設計・製造では高性能で明るいレンズを製作する事は非常に難しく製造コストもかかります。

フォーサーズなら25mm前後、APS-Cサイズなら35mm前後、フルサイズなら50mm付近の単焦点レンズを可能あればラインナップに加えて
下さい。F1.4クラスが理想的ですがまずは50mmF1.8クラスの低価格なものでも、十分キレイなボケを楽しめます。
また中望遠から望遠レンズもF1.4からF2.8の大口径レンズが各社からラインナップされていますが、最初のステップとしては高くなりすぎる
かもしれません。

ボカすために!その2
広角・標準・望遠どれでもイケル!
ボケとはすなわち被写界深度から外れたところです。以前もご説明したように広角になればなるほど深度は深くなり
望遠になるほど浅くなります。この特性をうまく使う事が第一歩です。
被写体との撮影距離が近くなると広角系のレンズでもボカして撮る事が可能ですが、写り込む範囲が多いため背景の
処理に注意します。標準レンズはともすると締まりの無い絵になりがちなので、思い切って寄ったりすると違った一面が現れます。
望遠レンズは深度が浅いのでブラさず、深度も確保出来る露出設定が重要です。
2009061905
Canon EOS 5D EF 20-35mm F3.5-4.5 20mmワイド端 F3.5 絞り優先AE
この写真は広角20mm側で撮影。被写体に限界まで近づき、背景を多く取り入れて撮影してみました。
2009061906
Canon EOS 5D EF 20-35mm F3.5-4.5 35mmワイド端 F4.5 絞り優先AE
こちらは同じレンズですが35mmテレ側で撮影。ピントの合う範囲がよくわかります。
2009061907
Canon EOS 5D EF 50mm F1.8II 絞りF2 絞り優先AE
今回の主役。開放からほんのわずかだけ絞って撮影しました。
2009061908
Canon EOS 5D Leitz Elmarlit R 180mm F2.8 絞りF4 絞り優先AE
例によってマウントアダプターにて装着。猛烈に重いレンズですが好きな描写です。

ボカすために!その3
クセ(個性)を生かせ!
レンズには多かれ少なかれ固有の「クセ」があります。これは特に「ボケ味」に現れますので自分のレンズの「クセ」を知るため
に開放から小刻みに絞りを変えて撮影してみましょう。
また、被写体との撮影距離によってもボケ方は変わってきますからとにかく、いろいろなシチュエーションで撮影する事が大切です。
デジタル一眼なら撮影データがexif情報として残っていますから、いつでも参照でき本当に、繰り返しますが本当に便利になってます。
(フィルム代、現像・プリント代もかからないし・データも残るわけですしね)
2009061909
Canon EOS 5D Leitz Hektor M 135mm F4.5(ヘッド部) F4.5 絞り優先AE
M型ライカ用の望遠レンズですがアダプタを組み合わせてEOSで使用してみました。

ボカすために!その4
ピントの合う範囲は「面」と捉えよ!
大きくぼかすには中望遠から望遠レンズで絞り開放付近で使用するのが常套手段
ですが、例えば300mm F2.8などでポートレートを撮影すると右目に合わせたピントが左目ではピントが合っていない状態になりかねません。
カメラアングルを被写体に対して平行面が多くなるようにずらしたり、若干、絞りを絞る事によりよりはっきりした写真を撮影する事も可能です。
もちろん、逆にずらして、あえて一点のピントで強調する手法もあります。
2009061910
Canon EOS 5D Canon EF 50mm F1.8 II絞りF2 絞り優先AE
この小さなレンズは優等生で開放付近から破綻の無い描写力を発揮します。
下の「その6」で触れる「2線ボケ」がわずかに感じられます。

ボカすために!その5
開放もいいけど、チョイ絞りが美味しい!

理論的に全く歪みや収差が起きないレンズは存在しません。多かれ少なかれ、どんなレンズにも歪みや収差が残っています。
これは限界付近、つまり絞り開放に出やすく、絞りを絞って行くと改善されていきます。
この収差や歪みが残っているところが実に美味しい「レンズの味」を色濃く描き出します。
デジタル一眼時代とはいえやはりアナログ的な感覚が味を醸し出しているのは何か人間らしさを感じますね。
(光学的には口径食もからんできますが今回は省略)
2009061911
Canon EOS 5D Leitz Elmarlit R 180mm F2.8 絞りF4 絞り優先AE

ボカすために!その6
背景の光を読め!
ここまでくるとかなりの難易度になってきます。
ボケたところは形はボケるのですがそこに明るく直線的なものがあると強調され、いわゆる「2線ボケ」といわれる汚いボケになる事があります。
これはメインの被写体との距離、カメラとの撮影距離で変化する傾向があるので
普段使用するレンズで様々なシチュエーションで撮影して経験値を高めるのが
理想ですが、結構めんどくさいので、ある種の「逃げ」のテクニックを使うと便利です。
1.背景に光るものや連続する直線を入れる事を避ける。
2.背景との距離を大きく取る。
3.背景はメインの被写体に対して暗いものを選ぶ。

上記3点はある意味、お手本的な手法なので、作図意図によっては無視しても差し支えないですが基礎的な部分ですので、きちんと抑えておけば、モデルさんに喜ばれます。
2009061912
Canon EOS 5D Leitz Elmarlit R 180mm F2.8 絞りF4 絞り優先AE
木漏れ日が葉っぱを透かしているところを探して撮影しました。背景にあたる所は日があたらないので暗く落ち込み、メインの被写体をより浮き上がらせています。

ボカすために!その7
前もよく見る!
被写体の前後はボケます。
今までご説明してきたのは主に「後ボケ」のところですが、当然、被写体より手前にあるものもボケます。
古来、この「前ボケ」は敬遠される傾向にありました。昔のレンズ設計の思想、技術的な制約で両立させる事も難しかったうえ、メインの被写体にかぶさる感じ になりますから、美しくないと思われていたのかもしれません。しかし、この「前ボケ」のボケ方も近年のレンズは非常に素直になってきています。
2009061913
上の写真は画面中央の葉にピントを合わせています。
2009061914
下の写真は画面右の葉にピントを合わせています。
共通データ
Canon EOS 5D Leitz Elmarlit R 180mm F2.8 絞りF2.8 絞り優先AE
このレンズは1970年代のものですがわりと素直なボケ方をします。ピントはかなり甘いのですが、個人的には長所に感じます。

このように、写真表現にはいろいろな切り口があります。
今回述べて来た事もあくまでもelmarの極私的な方法論です。
撮影条件によっては、また違ったアプローチをする事も多々あります。
皆さんが撮影されるときの参考になればelmarにとっては無常の喜びです。
2009161915
今度はもっと、小さくて可愛いモデルさんが良いなーっと...。
以上、ボケを語るとポートレートが無性に撮りたくなるelmarがお送りしました。