冬は大型DAPやポタアン、夏になるとTWS等のワイヤレスを使っているRudraです。
オーディオにもシーズンがあると思っているRudraはシーズンで機器の使い分けをしてたりします。
冬はコートやジャケットのポケットにオーディオ機器を色々入れられるので良いですが、夏は汗でケーブルがうっとおしい、ポケットも少ない、頑張ってDAPをポケットに入れるも発熱がつらい…。
汗に触れたりポケットで蒸れたりでDAPにも少なからずダメージが有りますしね。

今年の夏ももれなくTWSを使おうと思っていましたが、やっぱりTWSは同価格の有線イヤホンと比べると埋まらない音質差があります。

加えて、気軽に付け替えできる有線イヤホンと違い、TWSは音質面ではアプリで弄るくらいしか変化が得られず、マンネリ化するというのもあります。

Rudraはここ1,2年、多ドラ/ハイブリットの中華イヤホン(俗称ですが)にハマっていることもあり、それらのイヤホンが使いたい! という欲求を止められず。
そこで、「TWSより音が良くて、DAPやポタアンより手軽な環境で2.5mmバランス接続が出来ないものか…」と勘案した結果…

Fiio “BTR5”を買っちゃいました。
実は春先に買っていたので、半年近く使用してのレビューとなります。
結果から先に言ってしまうと、メインで使っていたGRANBEAT(DP-CMX1)を手放してBTR5をメインに据えるくらいには気に入ってます。
ライトユーザーほどここに投資するのをオススメしたいです。

ちなみに、これまでの使用TWSは、初代Airpods、初代Galaxy Buds、ONKYO W800BT、Fostex TM2、Jabra 75t Elite、今年買ったTW-1。うち75tとTW-1は現役です。

75t Eliteは去年から使ってますが、今だとWF-1000XM4やJBL Club Proとかの方が良いかもしれませんね。75tはまだまだ現役で使用してます。
個人的にはTWSの中ではノイズキャンセリング、アンビエント、高音質、比較的安い、とハイコスパな一品で結構気に入っています。
購入後に上位機種の85t Eliteが出てますが、こちらは聴いていません。欲しくなるといけないので。

お気に入りのTWSを見つけたから、これで安泰!
…これでめでたしめでたし、とならないのがオーディオ好きのカルマ(宿業)
ですよね。

前述の中華イヤホンですが、Rudra所有機は主にKZ社のイヤホンです。

ガラス瓶に入れて玄関に飾りたい。

リケーブル出来るので、TM2での使用も検討しましたが…。
KZ(CCA)のイヤホンはQDC(もしくはKZタイプC)の2pin対応で、CIEMの2pinと若干ピンの太さが異なります(0.78mmと0.75mm)。

QDCのコネクタはこんな感じにカバーがあります。 CIEMの2pinでも音は出ますが、あまりフィットはしません。

QDCとKZタイプCはコネクタカバーがあり、CIEMの2pinにはもちろんそんなものはなく…TM2のCIEMの2pinケーブルを買いましたが、接続がユルくて一回イヤホン本体だけが脱落したことがあります。

装着できているように見えますが、実はちょっとユルいです。音は普通に出ますが。

その時は無事拾えましたが…駅のホームから落としたりするのが怖くて家でしか使用出来ませんでした。
それでもKZのイヤホンを夏も使いたい…! という思いから、Bluetoothでも有線でも使える2.5mmバランス対応のBTR5に行き着いたというわけです。

というわけで、早速見ていきましょう。



うーん、これで新品1万5千円ちょっととは、中々のビルドクオリティです。

一般的なUSBメモリのサイズからちょっと太らせたくらいのサイズ感です。

筐体が綺麗なので眺めているだけでも所有欲が満たされますが、とりあえず聴いてみましょう。
まずはBluetoothで接続。NFC対応なので、対応していればワンタッチするだけでペアリング完了するので楽です。

実はLDAC接続は初体験だったり。
intime SORA Ti3 -碧-(2.5mmモデル)を接続して軽く視聴してみます。

…あっ、良い、これ(語彙力)

Bluetoothだし…とちょっと猜疑心を持っていましたが、一瞬で払拭されました。
これめっちゃ良いですね。
DAPと比較した詳細なレビューも後述しますが、解像度、分離度共に普通のDAPクラスです。

そもそも2.5mmバランスでの接続が普通の3.5mm(一般的なイヤホンジャック)よりも高音質ですし、スマホ+コンパクトなBTR5でバランス接続が使えるだけでもRudra的には目的を達成しています。

USBメモリより少し大きい程度。

上級DAPと比べると、空間描写にやや劣る感じはしますが、それもじっくり聴き比べなければ分からない程度。
ライトユーザーのステップアップならこれで充分…DAPやポタアン数台を所有しているRudraでも「これひとつで良いんじゃ…」と感じます。
実際、記事の執筆が完了した段階ではメイン環境になっています。

デュアルDACで駆動させるためには2.5mm接続が前提になりますが、お手持ちのイヤホンがリケーブル対応なら、3000円以下、なんなら2000円以下でも2.5mmケーブルが手に入る時代です。
格安ケーブルならG&V、Yinyoo、NICEHCKあたりから選んでおけば間違いないと思います。

格安ケーブルは探せば色々あります。4芯、8芯、16芯を買い揃えて聴き比べするのも良いですね(身に覚えが…)。
接続規格もMMCX,2pin,QDCと揃っています。

Bluetoothと有線の切り替えですが、有線接続中にケーブルを外すと直ぐにBluetoothに切り替わり、コーデックが表示されます。
同様に有線接続もシームレス、パッと切り替わるため使い勝手は上々。

有線(USB DAC)の接続に成功すると、サンプリングレートが表示されます。

Type-C搭載のAndroidやiPad(Pro/Air4)、Mac/PCは前述の通りC to Cケーブル一本で済むためすごく楽なのですが、LightningのiPhone/iPadと繋ぐ場合は少し厄介です。
Appleの純正アクセサリーにC to Lightningのケーブルが存在しますが、こちらはデータ通信は出来ますがUSB OTGの機能がないため、ケーブル一本で使うことが出来ません。

FiioのLT-LT1のように公式で対応を謳うものなら一本で接続可能です。
このケーブルは先日のelmarさんのBTR3Kの記事BTR3Kの記事でも紹介されています。

有線接続時は端末からBTR5に電力供給するため(アプリでOFFにもできますが)、搭載バッテリー容量の観点からiPhoneで有線接続する予定はなく、ケーブルは用意していません。
が、一応Rudraの手元の道具でiPhone8との有線接続も試してみました。

まず、Apple純正のUSBカメラアダプタ+Type-Cケーブル。

…ですよね。
ダメ元で USBカメラアダプタ+Type-C to USB変換アダプタ+C to Cケーブルも試しましたが同様。

LightningのiPad Proで色々試していた方なら見慣れているこのメッセージですが、ここでおまじないを掛けます。

無事認識、動作も問題有りません。
…ネタバラシしましょう。

iPhone > USBカメラアダプタ > microUSBケーブル > USBハブ > Type-Cケーブル > BTR5。USBハブはセルフパワーのものですが、無電源で使用しているので実質バスパワーです。

ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、他のUSB機器を繋ぐときもこういう組み合わせでiPhone/iPadで動作出来ますので、BTR5以外もこの方法で繋げられます。
機嫌が悪いとこれでもメッセージ出る時があります。
これならDAPか他のポタアン使った方が良いですね…。

先ほどBluetoothでの視聴でもかなり高音質なのが確認出来ましたが、ここからはDAP(GRANBEAT)と比較しさらに分析していきます。
接続は有線接続ですが、正直Bluetooth使用でもブラインドで聴き分けできる自信はないくらいに音は良いです。

というわけで早速視聴開始。
イヤホンはAndromeda+旧Vermilion+AZRA SednaEarfitの構成。

有線接続で聴いていきます。右がGRANBEAT。

Googl PixelのCMでお馴染みの「アンコール/YOASOBI」を聞いてみます(…最近はそのCM見ませんが、記事を書いてた時は良く放送してたのです)。

正直なところ、Andromedaで聞いてみた限りでは価格ほどの差がそこまで出ていないように感じます。

ただ、BTR5だと表現力で多少劣る部分も。
まず、イントロの最後「鳴らそう」までは、ボーカルの声がラジオ越しのようなノイズ混じりのザラザラしたエフェクトが掛かっています。
この部分はバックグラウンドの音がピアノのコード(和音)のみ、途中からドラムが入るだけの少ない音で構成されており、ボーカルの声だけがポツンと宙に浮いているイメージに聴こえます。
GRANBEATではボーカルの上下左右の空間が広く聴こえ、ピアノとドラムまでの距離感が遠く、大きな空間があるのが聞き取れます。
BTR5になると、ここの空間が狭まり、よりボーカルが中心に聴こえます。
正直好みの範囲ではあるのですが、この曲に関してはGRANBEATの鳴らし方が好みでした。
全体を通して聴く限りでは、音の厚みはGRANBEATに軍配があがり、厚みがあるおかげでやや暖色な音に感じます。
相対的にBTR5は寒色気味の音(肯定的な意味で)に感じます。

とりあえず一曲聞いてみての感想です。
BTR5の空間描写が劣ると書きましたが、正直事前にGRANBEATの音を聴いてなければこれでも十分すぎるくらい高音質です。

次はAndromedaの倍のドライバ、驚異の20BAを積んだKZの”ASX”で「Sugar」を視聴。Rudra的にはAndromedaやSE846よりこっちが本命です。
どの「Sugar」も好きですが、今回は「嵐」でも「Flo Rida」でもなく「Maroon5」のSugarです。

「Payphone」や「This Love」も良いのですがね。

視聴環境ですが、ケーブルはAndromedaと同じく旧Vermilion採用、イヤーチップはAZRAのSednaEarfit。

画像ではNICEHCKの銅8芯2.5mmケーブルですが、視聴は先述の通り旧Vermilionの2.5mm、QDC仕様で聴いています。

多けりゃいいだろと言わんばかりに大量のドライバが積まれているので、環境に左右されそうな一本です。

今回はAndromedaより顕著に音の性質の違いが顕著に出てきました。
GRANBEAT→BTR5の順で視聴しているのですが、BTR5はイントロから若干違和を感じました。
Aメロからバスドラ音が低音の下支えを担当しますが、BTR5はやや低音過多に聴こえます。
Lチャンネルからギターのフレーズが繰り返し鳴るのですが、BTR5だとバスドラ音がわずかに膨れ気味で、特にサビの所ではBTR5の方が意識していても見失いやすいです。
ただ、2番サビの後半でリードギターが重なるところでは音の位置関係がGRANBEATよりやや下の方から聴こえ、他の楽器に埋もれず、やや聴きとりやすいです。
モニターライクに分析すると、1番はGRANBEATの方が良く、2番はBTR5の方が良い、という結果でした。

BTR5はバランス接続でDual DAC駆動するので、3.5mmのアンバランス(普通の繋ぎ方)ですとSingle駆動になります。
普段は1万円以下のイヤホンをあまり外出時に使用しませんが、BTR5くらいコンパクトなら宅内の鑑賞時もどんどん使っていきたいところ。
というわけで、低価格のイヤホン+3.5mmだとどうなるか? というのも聴き比べてみました。

低価格高品質! がウリのイヤホンを引っ張り出してきました。

左がE3000、右がEP-630

低価格イヤホンの雄といえばRudra的にはKZのZSTとEDX、ZSN Proと思っていますが、マイナーすぎるので今回はリファレンスとしてFinal E3000とCreativeのEP-630がエントリー。
intimeの碧 -LightやBlueEverBlueやRHAのイヤホンは買う機を逃したまま未購入です。

今回の視聴曲は「一人ぼっちの革命/Nina77」。

鍵盤とエレキギターが印象的な曲で、サビの男女ボーカル混合のユニゾンパートがあり、音の共存をうまく表現出来るかがこの曲のキモとなります。

BTR5で3.5mmの視聴はE3000が一番乗りです。

さっきまで高感度BA機を使用していたのでホワイトノイズ対策でGAINを下げていましたが、ここからはGAINをHIGHに切り替えています。

一聴すると大差はないですが、細かいところに着目していくと、ボーカルのない間奏での楽器の分離感と位置関係はGRANBEATの方が優れていました。
BTR5では楽器間の距離がやや詰まり、分離感は負けずとも劣らないですが、「広さ」はGRANBEATに軍配があがります。

E3000で同じ曲をループして聴いていると、それぞれの特徴が理解できてきました。
BTR5の鳴る範囲とGRANBEATの鳴る範囲にやや違いがあり、中高音がやや尖っていて、低音はブーミーです。
GRANBEATと比べると寒色寄りの音に聴こえるというのもこの中高音が原因のひとつですね。
最初の「アンコール/YOASOBI」のイントロで感じていた「空間描写の違い」はこれが正体だと思います。

CreativeのEP-630では「PAIN/DUSTCELL」を視聴。

BTR5でも空間や分離感の描写はそこそこですが、GRANBEATと比べるとスネアが少し刺さり気味。
BTR5の特徴を鑑みた上で、適度に刺さりがあった方が聴こえ映えする曲と相性が良いです。EDMとかも良いですね。
GRANBEATでは刺さりも丸みを帯び、リラックスして聴けます。

結果から言えば、
「GRANBEATは低価格イヤホンでも高音質」
「BTR5は高価格イヤホン同士ならDAPと張り合える」
という感じでしょうか。
両者の比較だと、BTR5の方が寒色寄りなので、BAの無機質なモニターライク系と合う印象があり、結果的に上記の評価に至ったという側面もあるかもしれません。
BTR5はDAPと比べると、3.5mm接続の音質と音の広さにやや劣ります。

どちらにせよ両機共にバランス接続でないと実力が十全に出せないため、バランス接続推奨です。
ちなみに前述のホワイトノイズですが、Fiio BTR5ではホワイトノイズがあまり出ないのも良いですね。
GRANBEAT使っているときは、1万円のアッテネーターを間に噛ませるかどうかめちゃくちゃ悩んでいましたから…。

で、最終的に環境はどうしたかというと、GRANBEATはこの記事が最後のお仕事となり、BTR5に完全移行しました。
GRANBEATはバッテリーの調子も悪くなく、普通に使えていたのですが…。
別メーカーに行くか、ポタアン派に鞍替えするか、据え置きに移行するか…?
などなどと検討するための軍資金として、ですね。
(BTR5買ってるから結果的に軍資金はそんなに確保できてないんですけどね!)

それにしても当時の新品価格でいえば、GRANBEATはBTR5の4倍以上…。そもそも勝負出来るというだけでもすごいです。
Rudraは環境をApple Musicに完全に依存しているので、DAPはAndroid搭載が必須。
Rudraの使い方なら完成形と思っていたGRANBEATですが、それを手放しても良いと思える日が来るとは思いませんでした。
有線はもちろん、Bluetoothの音質も完成度が高く、BTR5、中々出来る子です。

以上BTR5の使用記でした。
GRANBEATを手放してしまったので、Rudraはこれから2.5mmバランスで良い感じのポタアンを探す旅に出ます。