今回はFiiOから新たに発売されたカセットプレーヤー CP13 をレビューします。

通勤、通学のお供と言えばストリーミングでスマホやデジタルオーディオプレーヤーからイヤホンで聴く事が一般化していますが1980〜90年代あたりはウォークマンをはじめとするカセットプレーヤーがその役割を担っていました。

カセットテープ(正式にはCompact Casette)はパッケージメディアとしてアナログレコードと同時発売される事も多くありレコード店にはカセット売り場も当たり前にありました。

elmarもご多分に漏れずアナログレコードやFM放送を録音したものからオリジナルのカセットテープを作りドライブや通勤、通学時に聴いていたものです。

それまで音楽を聴くのはアナログレコードが主体で当然ながら自宅で聴く事が当たり前でした。

外出時に聴くことは難しくSONYのウォークマン発売に伴い当時のヤング(死語)のライフスタイルが大きく変わったのでした。

ウォークマンの爆発的ヒットに伴い、各家電メーカーから競合機種が発売され小型化、高機能化が加速しました。

実は90年代当時、elmarは某量販店のカセットプレーヤーコーナーで販売を担当していたのでカセットに対する思い入れはかなりあります。

近年、なぜかラジカセカセットデッキが若者の間で注目されておりオークションでは高価で取引される事も珍しくありません。

そんな中、FiiO CP13は開発されました。

カセットテープは磁気テープに磁気ヘッドでアナログ記録するメディアであり安定した録音・再生には走行系の精度と磁気ヘッドの品質が不可欠です。

現在でもいくつかのメーカーからポータブルタイプのカセットプレーヤーが発売されていますが音質的には今ひとつといったところ。

東芝のオーディオブラントとして知られたAUREXブランドからAX-W10C(愛称Walky)というBluetooth搭載モデルも発売されています。

Walkyは当時も使われていた愛称なのでご記憶の方もいるかもしれません。

カセットプレーヤーは各社が技術的にしのぎを削り、極限まで小さく、軽く、高音質を目指していましたが後に現れるMDやMP3プレーヤーにとってかわられ姿を消します。

FiiOは新規に大型フライホイールの採用により安定走行を実現しているそうです。

カセットのメカニズムや再生ヘッドといった部品はおそらく供給元が限られており走行安定向上には大口径フライホイールでイナーシャの増大を図る事は理にかなっているように思われます。

更にアナログ再生には高性能オペアンプJRC5532を搭載する事により低ノイズ、高S/N比を実現しているそうです。

CP13は長時間録音用テープには対応していませんのでC-90、C-120の使用は避けておきましょう。

それでは実機を見ていきましょう。

ボディーカラーはブラック&ホワイトとブルーが用意されています。

パッケージはこんな感じでシンプル。

elmarはブルーを選択しました。

同梱品は各種マニュアル、充電用のUSB-Cケーブルとテープ確認窓用保護フィルムのみです。

本体は金属製で手触りもよく高級感があります。

重量が実測で320gほどでサイズから受ける印象よりは軽いですがポータブルのカセットプレーヤーとしては重いかも知れません。

デザインはシンプルそのもの。

いささか野暮ったい印象も受けますが令和の時代に生まれてきた事だけでもトピックです。

テープの出し入れはここを持ち上げて行いますが結構固いのと片側にしか手をかける場所がないのでちょっと重いです。

操作系は再生、早送り、巻き戻し、停止ボタン、ボリュームつまみ、3.5mmピンジャックのみです。

再生はワンウェイでオートリバース(両面自動再生)には対応していません。

テープの片面の最後まで走行するとオートストップが働きます。

バッテリーは本体内蔵式でUSB-Cで充電を行い最大13時間再生が可能とのこと。

完全アナログ設計のためデジタル出力やBluetooth機能はありません。

使用できるテープはTypeI(ノーマル)のみで TypeII(クローム)Type IV(メタル)には対応していません。

※TypeIII(フェリクローム)も存在していましたが短期間でTypeIVに切り替わったので除外します

それでは早速聴いてみましょう。

試聴に使ったヘッドホンは以前、レビューしたAHIDAVOX【ST-90-05】

このヘッドホンはレトロな外観でたっぷりとした低域がカセットプレーヤーには最適かと思います。

スピッツ/ひみつスタジオ

2023年リリースのアルバムでCD、アナログLP、ストリーミングに加えカセットテープもリリースされています。

カセットテープは縦長のパッケージになりますからCDとは違った構図で楽しめます。

早速、再生してみます。

音質は現代の基準で言えばナローレンジでモコっとした塊感が感じられます。

ラジオから流れてくるような耳障りの良い疲れない音ともいえるでしょう。

無音部ではテープ特有の「サー」というヒスノイズが聴こえますが音楽が流れ出せば気になりません。

Apple Musicで配信されている同アルバムと比較するとかなり違いがあり別ミックスと捉えてもいいのかもしれません。

全盛期にはDolby B、C、Sなど様々なノイズリダクション方式がありましたが本製品には搭載されていません。

このノイズリダクションは昨今のイヤホン、ヘッドホンに採用されている外音打ち消しタイプものとは違い、録音時に周波数帯をイコライズして再生時にエンコードする形式です。

代表的なDolby Bは高域を持ち上げて録音、再生時に高域を下げてヒスノイズを打ち消します。

elmar手持ちのテープはほとんどDolby  Bが入っていますのでそのまま再生すると若干ハイ上がりの音になるはず。

試してみましょう。

納戸から発掘したオーディオテープの数々からまずはこちら

Journey/Frontiers

使用テープ:SONY AHF TypeI(Normal) C-60 

1983年発売で大ヒット曲「セパレイトウェイズ」を含むスティーブ・ペリー在籍時の代表作。

自分自身がハードロック/ヘビーメタルに傾倒していく契機となった大好きなアルバムでアナログレコードからダビングしたものです。

当時はレコードを買ってくるとすぐにテープ化してレコードの出し入れによる傷や劣化を防ぐようにしてました。

過去の自分がカセットにはDolbyのチェックをつけてますがこのレコードを買った時期に所有していた自分の機材(SANYOの※シスコン)から考えればDolby Bだったはずです。

※シスコンとはシステムコンポの略でオーディオメーカー以外にも各家電メーカーから発売されていたオーディオシステムです。外観は立派ですが中身はチープなものが多かった印象

確かにハイ上がりですが記憶にある音に近くこれはこれでアリ。

力強さも感じられる好きな音です。

 

CP13のメカ部分はシンプルな構造のようで再生中に本体を大きく動かすと回転ムラが発生します。

しかし静止した状態では非常に安定しておりメーカーが謳うように低ワウ・フラッターを実現しています。

ワンウェイ再生のためA面が終わったらテープを裏返してB面を再生する必要があります。

この辺はある程度割り切って使う必要がありそうです。

続いて自分で作ったオリジナルテープを聴いてみます。

使用テープ:SONY HF-PRO 46 TypeI

収録楽曲をみるとジミ・ヘンドリックス、ドアーズ、ローリングストーンズ、ジェファーソンスターシップとMTV時代とは思えないラインナップ。

流行りの楽曲もよく聴きましたが当時からロックの歴史を【掘る】こともしていたんだな、自分。

聴いてみるとレコードからの録音とテレビ放送からのライブ音源を使っています。

当時はアナログダビングするしかありませんから録音を重ねる度に音質は劣化していきます。

そのかわり、個人が楽しむ分にはコピーは可能だった訳である意味、いい時代だったのだろうと思います。

Face To Face/ONE BIG DAY

使用テープ:SONY UXS-46 TypeII(クローム)

元の音源はCDから。

Face To Faceはいわゆるニューウェイブバンドの一つで女性ヴォーカル、ローリー・サージャントを中心とした構成。

このサードアルバム後に解散してしまいますが個人的に好きなバンドでした。

映画『ストリート・オブ・ファイヤー』の架空バンド Fire.incの一部ではヴォーカルも担当していたようです。

CP13Type IIは推奨外にはなりますが再生自体は可能です。

TYPEIIテープの恩恵なのか鮮度が高く感じられます。

硬めの高域に繋がるややアンバランスですが解像感は高く聴こえる印象。

このあたりは経年劣化もあるかもしれませんがポテンシャルは感じられましたのでTypeII以降に対応の製品がでてくるといいですね。

厳密にいえば周波数特性は高域よりにシフトしているはずですが聴きづらくはないです。

Bruce Springsteen /THE WILD,THE INNOCENT & THE E STREET SHUFFLE

THE BOSSの愛称で知られるブルース・スプリングスティーン1973年の2nd。

本稿執筆中に中古レコードショップで購入しました。

パッケージにはROSALI TA(COME OUT TONIGHT)等収録とありますし、UK向けのリイシュー版のようです。

音はまさにカーラジオから流れてくる聴きやすさで遠くに灯が見えるハイウェイを連想させます。

カセットテープは現役で使っていた世代には懐かしさを、初めて使う世代には新たな発見を呼び起こすメディアなのかも知れません。

FiiOによると【復刻シリーズ第1弾】との事なので次の製品がなんなのか期待が膨らんできます。

以上、elmarがお送りしました。
※6/10 テープの種別に記載誤りがありましたので加筆修正しております。